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血で払うか、金で払うか。この問いはまるでTVドラマのように響く。金が払えないなら、体で返せ、か。 血はいうまでもなく、体だ。はっきりいってしまえば吸血行為は人間にとっての生殖行為に他ならない。ただ違うのは常に自分は搾取される側であり、相手は常に自分を自由に陵辱するということだ。所詮抜き取られるだけの血の詰まった皮袋という本質を前に一体どんな事実が役に立つのだろう。 彼女の吸血は決して荒々しいものではない。吸血という行為をアクティブな攻撃衝動そのものと考えている人間は、アクション映画の見すぎだろう。なぜなら彼女たちにとって吸血行為は、極上の(これは言い過ぎか)ワインを飲むようなモノだ。彼女たちはなんとかして吸血しなくてはいけないという危機的な状況に追い込まれてはいない。なぜなら現在の流通の世界をかけ廻る血の流れというヤツは、とびっきりに太い血管の中を流れている。献血をはじめ、あふれ返った人間の流す血は簡単に手に入る世の中だ。かつての伝統的な吸血方法、占領地を兵士達が荒らしまわるようなそれではなく、混乱の静まった地で育む恋愛と呼ばれるようなそれが、今の彼らにとっての吸血行為を指すといっていいだろう。 カウンターに立つとき、まるで金が足りないかのような仕草をする。金をわすれたのかと聞かれて、頷く。照れ隠しのようにツケでもいい、と言われる。今度は首を振る。光に照らされた中で、まるで逢引のような気分になる。心臓はやや鼓動をはやめる。 吸血は客の前では行わない。献血で血を抜いたときに気分を悪くする人間がいるように、吸血でもその荒々しさ故に気分を害する人間もいる。そんな姿は客には見せられない。もしくは、自分にそんな経験はないけれど、もっと複雑な行為に及ぶためかもしれない。吸血という行為は献血と違って、彼女の心理に強い影響を及ぼすようだ。献血で血を抜くことに特別な感情を持つ人間はいない。いや、カンガルーノートに出てきた吸血女のような人間はいないこともないかもしれないが、小数だろう。 彼女の口を除くと白くて長い牙が見える。あんな鋭いものが口の中に含んでいて、口を切ってしまわないのだろうかと考える。おそらく人間のそれよりも厚い皮を持っているのだろう。だとしたら、あまり舌触りはよくないのかもしれない。人間のそれに比べて鈍感な舌。なぜ、たかだか献血行為に協力するというだけで、こんなに衝動的な感情につき動かされる。体のなかのどこかの、攻撃衝動にスイッチを入れられたような気分だ。 その瞬間、彼女の思いもよらない、いや、すでに何度も経験しているのだが、両腕にこもる強い力で体の動きを抑えられる。腕に爪が食い込み、鈍い痛みを感じているが、それ以上にこれから始まる行為への期待、羞恥心が上回る。それは乱暴ではあるが、決して単純なものではない。注射針を腕に刺すようなものではなく、体の中で静かに回っている血の流れに激しい波風を立たせるような扇動的な行為。それは性行為におけるペッティングであり、彼女の体と触れ合うその滑らかな皮膚の上にすべる指先がほとんど性行為のそれに重なる。体の中で心臓を強く感じる。おそらく心拍数はぐんと跳ね上がり、綺麗に血を拭きだすだろう。 彼女は体を密着させたまま、何度か牙を深く刺しいれる箇所を選別するように首筋に舌を這わせた。何度か噛まれているために、まだ回復していない傷を避けるように注意深く舌を這わせていく。時々すまなさそうに、謝ることもあったが、今では決してそんなことを口にはしない。なぜならこれは血を売って金を得る行為のごとく、お互いにとっての等価交換に過ぎないからだ。 いつまでもこの行為が続くような奇妙な連続感と、同時にいつまでもこの幸福、何かに触れ合う瞬間の可能性のような期待感が続くような錯覚を感じて、彼女の体に触れる手に力が入る。 その瞬間、まるで意図したかのように深く牙が首筋に立てられる。深く、といっても当然動脈に達するほどは深くなく、静脈に差し入れているだけだが、流れてくる血を裏子は静かに舐める。静かに響くその反響音がまるでまるで余韻のように響き、血流が収まるまでそれは続けられる。 あ た し の も の に な っ て み な い ? いつも心の中で反響している。いや、既に自分の中の一部はもう彼女のものだろう。契約の証は既に首筋に記されている。この傷が完全に消えてしまうことはないだろう。なぜなら、自分は既に彼女のものなのだから。 | |||
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あーん?(゜Д゜) ハア?? | |||